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東京高等裁判所 昭和58年(行ケ)12号 判決

2 そこで、原告の主張する審決の取消事由について検討する。

原告は、本願意匠及び引用意匠の構成、態様についての審決の認定が誤りであるとして、その共通点、差異点についての判断の問題点をあげ、本願意匠の特徴は、右記載の箱体及び台板の具体的形態を結合した全体的外観にあるとして、引用意匠と全体的構成を異にし類似しない旨主張するから、本願意匠の特徴点を中心に引用意匠と対比検討する。

(一) 箱体について

成立に争いのない甲第一号証によれば、本願意匠の箱体は、偏平かつ横長な形状を基本とし、正面(横長辺)に設けたリブ状の開閉部を前方へゆるやかな弧状に膨出し、また背面(横長辺)の軸着部をわずかな弧状に形成し、この正背面と他の二側面(縦短辺)との四個の各角を同型の弧状にしており、厳格な意味での直方体とはいい難いが、全体的に観察すれば、いわば直方体と認められるものである。

これに対し、成立に争いのない甲第四号証の二によれば、引用意匠の箱体は、偏平かつ横長な形状を基本とし、正面(横長辺)に設けたリブ状の開閉部を前方へゆるやかな弧状に膨出させ、また背面(横長辺)は直線状であるが、その辺に沿つて縦長円柱状の小片二個の軸着部を突設させて形成し、この正、背面の横長辺と他の二側面(縦短辺)との四個の各角を同型のわずかな弧状にしており、厳格な意味での直方体とまではいい難いが、全体的に観察すれば、直方体状と認められるものであつて、本願意匠と対比しても、その直方体状として顕著な差異は見出し難い。

原告は、本願意匠の箱体は、むしろカマボコ状の平面形をしており、直方体とは全く別異な形状である旨主張するが、いわゆるカマボコ状は、板付蒲鉾のように中高で彎形をなす半円状に近い形状をいうのであつて、本願意匠の箱体にみられる程度の弧状をもつてカマボコ状ということはできず、引用意匠の箱体の形状とは、弧状に若干の差異があつても、全体的には、直方体状としては同一類型の形状に入るといつて妨げない程度に類似しているものと認められる。

したがつて、両意匠は、偏平な横長の直方体を基本形状とする点で共通するというべきである。

(二) 台板について

前掲甲第一号証、第四号証の二によれば、本願意匠の箱体内部の台板は、後方約<省略>の部分を平坦な突堤部とし、前方約<省略>の部分を段状に傾斜させて前端を凹面状とし、また、段部から前方を、中央部と左右両端の直線部を残して二個の半円状に隆起をもたせてつけまつげ保持部としたものであり、これに対し、引用意匠の箱体内の台板は、後方約<省略>の部分を凹面状の突堤部とし、前方約<省略>の部分を段状に下げ、突堤部後方略<省略>の部分に左右両端を残し二個の半円を曲線で繋いだ波形様に隆起させてつけまつげ保持部としたものであることが認められる。

この点について、本願意匠と引用意匠とを対比すると、両意匠は、台板に、突堤部と二個の半円状に隆起させたつけまつげ保持部を設け、このつけまつげ保持部を看者に注目させるよう顕著に目立たせて構成してある点において共通しており、このつけまつげ保持部としては、本願意匠では、段部から前方に突堤部よりやや低く中央と左右両端を残して設けられているのに対し、引用意匠では凹面状の突堤部の後部に左右両端を残し半円の間を曲線で繋いで設けられている点において差異が存するが、この台板を全体的に観察するときは、両意匠に係る物品の用途であるつけまつげ収納箱として、最も看者に注目されるところの、つけまつげが半円状に隆起させた形状で台板上に目立つように保持される点で共通するものと認められるから、その差異は部分的な微差に止まり、両意匠の類似性を否定する理由とはならない。

原告は、審決が共通点とするこの部分に関する認定は、全く抽象的な共通点であつて、美的な外観としての意匠において類否を左右する主要部とはなり得ない旨主張するが、原告がその根拠として両意匠の差異を主張するところは、両意匠の細部を部分的に分析・対比し、全体的な構成をなおざりにして異別を主張するにすぎないものであつて、その差異点が通常ことさら看者の注意をひくものとは考えられず、つけまつげ収納箱としての両意匠の基本的構成、態様から全体的にその台板について観察すると、前記のとおりその主要部において共通性を有し、同一に近い印象を与える程度に類似しているものと認めざるを得ない。

(三) 開閉部、軸着部を含めた全体の構成について

本願意匠及び引用意匠は、前示(一)、(二)のとおり、この種物品として意匠の類否を決すべき主要部の全体観察において、看者に与える印象は共通のものがあり、実質的に同一といえる程度の類似性を有するものであるが、さらに、前掲甲第一号証、甲第四号証の二によつて、開閉部、軸着部に論及すると、開閉部において、平面上部からみて、本願意匠は、全体的にゆるやかな弧状にして前方へ膨出させているのに対し、引用意匠は、ゆるやかな弧状であつてもやや直線的な形状をなしていること、軸着部において、本願意匠は、箱体の背面の身と蓋の接合部に左右端が弧状に箱体に沿つて横長の細い半円柱状に設けられているのに対し、引用意匠は、背面の身と蓋の接合部の左右端寄りに接合部沿いに縦長円柱状の小片二個を突設している点において差異が存するが、その差異は部分的なものに止まり、この差異点を附加して両意匠を全体観察しても、その類似性を否定する程度のものではない。そして、原告がその主張を立証すべきものとして提出したその余の証拠を検討しても、いずれも以上の判断を覆すに足りない。

そうすると、両意匠は類似しているものといわざるをえないから、本願意匠は意匠法第三条第一項第三号に規定する意匠に該当するとした審決の判断に原告主張のような誤りはなく、取消すべき違法は存しない。

3 よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却する。

〔編註その一〕 本件登録意匠に関する事項は左のとおりである。

原告は、昭和五〇年七月一五日、意匠に係る物品を「つけまつげ展示用収納箱」とする別紙(1)に記載のとおりの意匠(以下「本願意匠」という。)につき、意匠登録出願(昭和五〇年意匠登録願第二九六一〇号)をしたところ、昭和五五年三月二八日拒絶査定を受けたので、同年七月六日に審判を請求し、昭和五五年審判第一二二七三号事件として審理されたが、昭和五七年一〇月二七日、「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年一二月二二日原告に送達された。

2 審決の理由の要旨

(一) 本願意匠は、偏平な横長の直方体を基本形状とし、その厚みを二分して身と蓋にした箱体で、その正面の接合部に開閉部を突設し、背面に軸着部を突設し、内部に半円状のつけまつげ保持部を隆起させた台板を設け、蓋を透明とした基本的構成態様であつて、これらの具体的態様をみると、箱体は、正面をやや前方へ膨出して各々の角を弧状にし、正面の身と蓋の接合部に沿つて中央が前方へ弧状に突出したリブ状の開閉部を設け、背面の身と蓋の接合部に左右端が弧状に箱体へ融合する横長の細い半円柱状の軸着部を突設したものであり、箱体内の台板は、後方約<省略>の部分を平坦な突堤部とし、前方約<省略>の部分を段状に下げて前端を凹面状とし、段部から前方の中央部と左右両端を残して二個の半円状に隆起させてつけまつげ保持部としたものである。

(二) これに対し、「大阪化粧品商報」一九七〇年三月二八日号の第二三頁に記載された包装用容器(以下「引用意匠」という。)は、新聞の記載により、別紙(2)のとおり、偏平な横長の直方体を基本形状とし、その厚みを二分して身と蓋にした箱体で、その正面の接合部に開閉部を突設し、背面に軸着部を突設し、内部に半円状のつけまつげ保持部を隆起させた台板を設け、蓋を透明とした基本的構成態様であつて、これらの具体的態様をみると、箱体は、各々の角を小さな弧状にし、正面の身と蓋の接合部に沿つて中央が前方へ弧状に突出したリブ状の開閉部を設け、背面の身と蓋の接合部の左右端寄りに、縦長円柱状の小片二個の軸着部を突設したものであり、箱体内の台板は、後方約<省略>の部分を凹面状の突堤部とし、前方約<省略>の部分を段状に下げ、突堤部後方略<省略>の部分に左右両端を残し、二個の半円を曲線で繋いだ波形様に隆起させて、つけまつげ保持部としたものと認められる。

(三) そこで両意匠を比較すると、両者は、意匠に係る物品を同種のものとし、形態においては、前記した基本的構成態様が共通し、具体的態様においても、箱体正面の開閉部を、中央が弧状に突出したリブ状とした点が共通する。これら共通点は、両者の特徴的形態として看者の注意を惹くところであり、かつ、共通点より受ける印象は顕著であるから、両意匠の類否を左右する主要部である。

一方、箱体内の台板において、本願意匠は、突堤部を平坦とし、段部から前方を二個の半円状に隆起して、つけまつげ保持部としているのに対し、引用意匠は、突堤部を凹面状とし、その後方を波形様に隆起して、つけまつげ保持部としている点に差異が認められ、また、箱体において、正面の膨出の有無と、軸着部の形状に前記したとおりの差異が認められる。

しかし、台板については、両者とも半円を基調としたつけまつげ保持部を隆起させたものであり、これを設けた位置と態様に差異があつても半円状の隆起が顕著に目立つので、この差異は微差に止まる。また、箱体における差異は、一辺にみられる若干の差であつて、両者の基本形状である横長直方体の印象を変える程のものでなく、軸着部は、背面で目立たない部分であるから、ともに部分的差異に止まり、両意匠を別異のものとすることはできない。

(四) 以上のとおりであつて、類否判断を左右する主要部において共通する両者は、前記した部分的差異があつても、意匠全体として観察した場合相互に類似しているものである。

したがつて、本願意匠は、意匠法第三条第一項第三号に規定する意匠に該当し、登録を受けることができない。

〔編註その二〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

別紙(1)

<省略>

別紙(2)

<省略>

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